葬儀費用の平均額

財団法人日本消費者協会では消費者の葬儀意識と葬儀実態について、3年ごとに全国で『葬儀についてのアンケート調査』を実施し結果公表しています。
この調査では、実際に葬儀でかかった費用についてもデータ収集し、平均金額や最高金額・最低金額などを報告しています。葬儀費用については他に信頼できる全国規模の調査がないため、影響力の大きい調査です。
葬儀費用の平均額について、同調査結果を検討しながら、次のポイントからご案内します。

全国平均額は1,998,861円?

2010年に行われた日本消費者協会の『第9回葬儀についてのアンケート調査』の結果によると、過去3年間に「身内に葬儀のあった人」が葬儀にかけた費用の総額は、全国平均で1,998,861円(最高額:8,100,000円、最低額:200,000円)だそうです(「月刊消費者」2010年10月号)。

この金額は、3年前の2007年に行われた前回調査における231,000,000万円(最高額:10,000,000円、最低額:200,000円)より30万円以上下がっていることになります。
この点は、最近の葬祭市場での価格低額化傾向とも重なっていて、実勢に即しているようにも見えます。

1,998,861円という平均総額費用についても、さほど現実離れした違和感はありません。葬儀支援ネットの取り扱い事例でも、トータルでこのぐらいの費用がかかっている葬儀も少なくはありません。

同調査では、葬儀にかかった総額の他に葬儀の3費用についても、それぞれ次のように結果報告されています。(注:( )内は前回2007年の第8回調査金額)

1.葬儀一式(葬儀本体)費用

  • 平均額:1,266,593円(1,423,000円)
  • 最高額:5,000,000円(4,500,000円)、最低額:200,000円(200,000円)

2.寺院費用

  • 平均額:514,456円(549,000円)
  • 最高額:1,888,016円(2,500,000円)、最低額:10,000円(20,000円)

3.飲食接待費用

  • 平均額:454,716円(410,000円)
  • 最高額:4,500,000円(2,626,368円)、最低額:15,000円(20,000円)

注:1~3の平均額の合計が総額の平均額と一致しないのは、アンケートの設問設計によると思われます。

これによると、人数・規模による流動性が少なく、葬儀費用そのものとも言える1と2の費用平均額は、いずれも前回の3年前より下がっています。

しかし、これら同調査結果の平均金額とされる数値だけを見て、ただちにそれを葬儀費用の一般標準のように受け止め、葬儀にはそれだけの費用が必要だと考えるのは早計です。

この調査結果が、本当に「全国平均」と言えるかどうかは、同調査の手法やデータ量による精度が重要で、それによって結果数値の信頼性も違ってくるのです。

誤解を与える「全国平均額」の実態

財団法人日本消費者協会の『第9回葬儀についてのアンケート調査』は、同協会の消費生活モニターと協会会員1,024人に対して郵送で行われています。回収率は98%と極めて高率です。

ただし、同調査は葬儀費用についてだけの調査ではありませんから、実際に葬儀にかかった費用について回答しているのは、1,024人中の「過去3年以内に身内に葬儀のあった人」で29.2%、294人となっています。

つまり、葬儀費用の全国平均額などを算出するもとになっているデータサンプルは、この294人分の回答データでしかありません。

ということは、「葬儀費用総額の全国平均1,998,861円」とは、あくまで同調査における全国294人の回答者の葬儀費用総額の平均値に過ぎないということになります。

日本全国で毎年110万人以上の人が亡くなり、100万件前後の葬儀が行われています。その中のわずか294件の葬儀データに基づく葬儀費用の平均額が、広く一般標準化できるような「全国平均額」と言えるのでしょうか?

「249件の葬儀事例によれば・・・」という前提条件なしに「葬儀費用の全国平均額」と言うのは、たいへん誤解を与える報告です。

調査手法も疑問・調査精度も不十分

さらに、調査手法としてのアンケートの設問設計にも疑問を感じます。

294名の回答者は「過去3年以内に身内に葬儀のあった人」とのことです。
「・・・身内に葬儀のあった人」ということは、回答者は必ずしも「施主(喪主)の人」とはかぎらないことになります。
しかし、ほとんどの場合で、葬儀にかかった費用すべてを正確に把握しているのは、その葬儀を主宰し、費用も出している施主(喪主)の方だけです。たとえ身内の方でも、それぞれにいくらの費用がかかったかは、施主(喪主)の方に聞かなければわかりません。

信頼性の高いデータを得るなら、調査対象者を「葬儀を主宰(施主・喪主など)した人」に限定すべきでしょう。

また、このアンケート調査では、葬儀にかかった費用、つまり「出」の金額については訊いていますが、香典などによる「入」の金額は訊いていません。
ですから、「入」と「出」との差し引きで実質的にかかった葬儀費用がいくらなのかは、調査されていません。
この点でも、同調査とその結果には、精度・信頼性に疑問と留保がつくと言えます。

平均・標準より予算見積が重要

日本消費者協会の『葬儀についてのアンケート調査』による葬儀費用の平均額は、マスメディアでも取り上げられることが多く、その金額があたかも葬儀にかかる費用の標準のように取り上げられることもあります。

しかし、実は上記のように、情報の精度・信謬性に留保が必要な、参考程度にすべき調査報告であることを承知しておくべきでしょう。

人の死はそれぞれに固有・個別のもので、葬儀・葬送に「平均」や「標準」といったものは、もともとありません。

葬儀にかかる費用も同様で、どのような葬儀をしたいかによって大きな幅があります。実際に必要な出費は、香典や保険などの「収入」となる額の多寡によっても違ってきます。

「平均」や「標準」といった、いかにももっともそうな情報に惑わされず、自分たち遺族の想いや故人の遺志に沿った葬儀のかたち、会場、会葬者など収支の要素条件から精査し予算を見積もることが重要です。

お困りのときは、まず、葬儀支援ネットにご相談下さい。ご希望の内容とご予算を精査し、最適な葬儀のマッチングと葬儀社のご紹介をいたします。

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