樹木葬|大地に還り、花樹に転生する

樹木葬は「自然葬」とは区別されます

樹木葬は、遺骨を地中に直に埋葬し、そこに墓石に代えて花や樹木を墓標として植える葬送法です。
歳月の経過とともに、土中の遺骨は大地の一部となっていき、また墓標としての花樹は枝葉を繁らせ成長していきます。そのすがたが「死後、自然の一部となって新しい生命の糧となる」といった自然回帰イメージや輪廻転生的イメージとつながるためか、この樹木葬を散骨葬と同じような「自然葬」のひとつと思われている方も多いようです。

しかし樹木葬は、墓埋法(墓地、埋葬に関する法律)によって墓地・霊園として許可された区域内でしかできません。その意味では「樹木葬のお墓」と言っても、墓石、カロート(納骨室)を用いない点が違うだけで、従来からの区画使用型、集合型、合葬型などのお墓と同じで、厳密には「自然葬」ではありません。

里山環境保全のための樹木葬

もともとの樹木葬は、里山の自然環境保全を目的に、岩手県のお寺、知勝院が提唱し、1991(平成3)年に地域の里山でもある同寺の山林を墓地とする認可を得て、始まりました。
日本初のこの樹木葬墓地は、「美しい里山の自然を後生に残す」という趣旨に賛同し、樹木葬のお墓を求める人を生前契約で募集し、その収益で自然環境の保全を行うとともに、そのための植樹や下草刈りなどの活動、慰霊・交流イベントなどに、契約者も希望すれば一種の「終活」として参加できるという仕組みをつくりました。

この先行事例に倣って、その後各地で同様の自然保全型、里山型の樹木葬墓地が開設されたことで、樹木葬が広く知られるようになり、自然回帰的な葬送法としてニーズが高まってきました。

その結果、本来は人工的な造成を施さない自然共生型で、カロートや案内プレートなどの人工物も一切排除するような原理的なものとは異なる、造成された樹林地に、樹木を墓標とし遺骨を地中に直埋骨する、言わばスタイルだけの樹木葬墓地も、現在は多く作られています。

樹木葬の葬儀

樹木葬はあくまで埋葬法であり、お墓のかたちですから、その葬儀はさまざまです。特徴的なのは、喪主はじめおくりびととなる人たちで、火葬後の遺骨を骨壺から出して墓所となる区画の土中に直に、または土中で分解される自然素材の袋などに入れて埋骨し、土を掛けた後、墓標となる花樹の苗や若木を植え、全員で焼香や哀悼を捧げることです。
このとき、宗教者の立ち会いがあれば、その宗旨宗派に沿った埋葬儀礼がされます。

樹木葬墓のメリット

樹木葬のお墓は大概は家単位ではなく、個人単位で求めることができます。また、永代供養が前提で、お墓の継承者も不要な場合がほとんどです。このため、子どものいない夫婦や生涯独身の人、子どもがいても「死後の墓の世話をかけたくない」という人たちには、有力な選択肢となります。
散骨葬とは違い、時が経っても樹木が墓標として残りますから、子々孫々が墓参りすることもできます。