年忌法要・追悼会など

日本では葬儀後も、一定の年周期で繰り返し故人を偲び追悼することが、伝統的な葬送文化として定着しています。葬儀後の遺族の務めのひとつとして、仏教式では年忌法要、神道式では御霊祭、キリスト教では追悼ミサや召天記念日などの宗教儀式として行うのが一般的ですが、最近は非宗教的な追悼会・偲ぶ会も増えています。
ここでは、それぞれについて次の通りご案内します。

年忌法要(一周忌、三回忌など)とは

仏式葬儀の多い日本では葬儀後の追善法要として、死後7日ごとを基準とする忌日法要(きにちほうよう)と、祥月命日(しょうつきめいにち:故人の亡くなった月日)を基準とする「年忌法要(ねんきほうよう)」とがあります。

年忌法要は、亡くなった翌年の祥月命日に行う一周忌、翌々年(死後2年目)に行う三回忌、死後7年目に行う七回忌とつづき、以後、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、「二十七回忌」とあり、死後33年目の三十三回忌を「弔い上げ(弔いあげ)」と言って最終法要とするのが一般的です。ただし、地域や家によっては、神仏混淆の影響か、五十回忌や百年忌を行うこともあります。

年忌法要を行うには

年忌法要も本来は四十九日などの忌日法要と同じく、血縁者・親族や地域、職場などで故人と縁のあった方を招き、菩提寺の住職に回向をお願いして行うものです。

しかし、年忌法要も最近では簡略化される傾向にあり、三回忌ぐらいまでは親戚や縁者を招いて行うものの、七回忌以降は遺族だけ、あるいは施主だけで行うことも珍しくありません。なお、法要の後には会食の席を設け、参会者で故人を偲ぶのが一般的です。
ただし、菩提寺がありながらお墓参りだけで済ませ、帰りに墓参者だけで会食して年忌法要をしたと言っている遺族をまれに見受けますが、これは明らかに間違ったやり方です。

年忌法要は通常33回忌が最終の「弔い上げ」とされていますが、長寿社会の現代では故人の享年も高齢化しているため、法要を重ねるうちに遺族、縁者も高齢に達してしまい、従来のように弔い上げまで重ねるのは難しくなっています。このため、最近では一周忌の法要でも、遺族とごく限られた親族だけの少人数で行うケースも増えてきています。

年忌法要は日本独自の伝統的葬送文化

仏教の忌日法要は、お釈迦様が菩提樹の下で49日間瞑想を重ねて悟りを開いたことに由来する古代インド仏教の死生観に根ざしたものです。
一方、年忌法要は、仏教が中国を経て日本に渡来してくる過程で、中国で儒教の影響から四十九日後の忌日法要として「百ヵ日法要」が加えられ、さらに、一周忌と三回忌の年忌法要が加えられたと言われています。儒教は中国在来の葬送礼法で、その死生観では「喪中」の期間を3年とししているため、三回忌までが重視されたと言われます。

しかし、三回忌につづく「七回忌」以降の年忌法要は、日本で新たに加えられたものです。そこには先祖の霊を大切にする、日本独自の伝統的価値観や祖霊を重んじる神道の考え方が色濃く反映していると思われます。

神道式では御霊祭

神社神道では葬儀を神葬祭(しんそうさい)といい、その後の追悼儀礼は御霊祭(ごりょうさい、みたままつり)といいます。
御霊祭は、一般的には死後10日目に十日祭、50日目に五十日祭、100日目に百日祭が行われます。これらは、仏教式の初七日忌、四十九日忌、百カ日忌に相当します。その後は年祭となり、一年祭、三年祭、五年祭、十年祭と続き、以後は五年ごとに五十年祭までつづきます。いずれも、神職を自宅の祖霊舎や斎場に招いて行います。
なお、三年祭は仏教式の三回忌に相当しますが、三回忌が死後2年目に行われるのに対し、三年祭は文字通り、死後3年目に行います。

キリスト教の追悼ミサと召天記念日

キリスト教のカトリックでは、毎年の故人が亡くなった日に追悼ミサを行います。神父、遺族・近親者、親しかった人などが教会や自宅に集まり、聖書朗読と聖歌合唱などをし、お茶会を開いて故人を偲びます。
また、プロテスタントでは、故人の命日を「召天記念日」と言い、死後1年目、3年目、5年目のその日に、召天記念式を行うのが一般的です。教会または自宅に、牧師、遺族・親族、故人と親しかった人たちが集まり、牧師による祈祷、説教と聖書朗読、賛美歌合唱などをして故人を偲び、茶話会を催して神に祈ります。

自由形式の追悼会・偲ぶ会

故人の祥月命日(しょうつきめいにち)に遺族や親しかった人たちが集まって、故人の思い出を語り合いながら会食するスタイルも増えてきました。「追悼会」「偲ぶ会」とよばれるもので、最近はホテルなどを会場にして行われることが多いようです。

追悼会、偲ぶ会は年忌法要のような宗教的な追悼儀礼ではありませんから、内容・形式は自由で、菩提寺の了解が得られれば、住職・僧侶にも出席していただくこともできます。
あるいは、遺族・親族で年忌法要を菩提寺で行い、その後、会場をこうした追悼会や偲ぶ会に移して行うというスタイルもあります。